ネット上の掲示板やSNSでは「年俸25億円に広告収入15億円なら、毎年手元に40億円が丸々残る」といった単純計算が散見されます。しかし、北米プロスポーツの過酷な税制とマネーマネジメントの実態を知る専門家は、その甘い見立てに警鐘を鳴らします。
第一の壁は、カリフォルニア州の重い税負担です。ロサンゼルスを拠点とする選手には、米連邦所得税(最高税率37%)に加え、カリフォルニア州税(約13.3%)が課されます。さらに「ジョック・タックス(遠征先での試合ごとに課される州外所得税)」や社会保障税が加わるため、名目年俸の実質手取り額は40〜45%程度まで目減りするのが現実です。
第二に、強力なサポート陣へのコミッションフィー(手数料)が挙げられます。八村選手を支える大手エージェント企業(ワッサーマン・グループなど)への報酬率は、NBA規約で定められた年俸の最大4%に加え、マーケティング・広告契約においては10〜20%が差し引かれます。私設トレーナー、専属シェフ、法務・会計アドバイザーチームの維持費を含めれば、年間億単位の固定経費が発生します。
つまり、華やかに見える八村塁のフォーブス長者番付クラスの数字も、裏側では緻密な税務戦略と組織的なチーム運営によって初めて維持されているのが実態です。単なる「派手な稼ぎ」ではなく、一個人が多国籍中小企業のような事業体を運営している姿こそが真実と言えます。