幸帽児がこれほど人々の関心を惹きつける最大の理由は、数千年にわたり世界中で語り継がれてきた「スピリチュアルな幸運伝説」にあります。
ヨーロッパの中世から近代にかけて、コーウル(羊膜)を被って生まれた赤子は「絶対に溺死しない」「生涯を通じて貧困や病魔から逃れられる」「未来を予見する第六感を持つ」と信じられていました。特に船乗りや漁師の間では、羊膜自体が最強の魔除け・航海安全のお守りとされ、乾燥させたコーウルが高値で売買されたという歴史的事実が記録されています。チャールズ・ディケンズの名作小説『デイヴィッド・コパフィールド』の冒頭でも、主人公がコーウルを被って生まれたこと、そしてその膜が新聞広告で売りに出されたエピソードが描写されているほどです。
歴史上の偉人や指導者の中にも、幸帽児として生まれたとされる人物の名が多数挙げられます。
- ナポレオン・ボナパルト:戦場での並外れた直感と破竹の進撃は、幸帽児として生まれた天賦の加護によるものという伝説が残る。
- ジークムント・フロイト:精神分析の創始者であるフロイトもコーウルを被って誕生したと自伝や伝記で言及され、母から「偉大な人物になる運命」と告げられて育った。
- シャルル・ド・ゴール:フランスの元大統領。国家の危機を幾度も乗り越えた強運の背景として、幸帽児の生まれであることが語られた。
日本の芸能界や著名人に関しても、ネット上では「木村拓哉が幸帽児だった」「ビートたけしが被膜児で生まれた」といった噂が定期的に囁かれます。しかし、これら日本の著名人に関する情報の大半は、熱狂的なファンコミュニティや都市伝説まとめ等で流布した俗説であり、本人の公式自叙伝や一次インタビューで確定的な事実として裏付けられた客観的記録は極めて乏しいのが実情です。「圧倒的なスター性や強運を持つ人物=幸帽児に違いない」という後付けの物語(ナラティブ)が生成され、ネット上で定着していった典型例と言えます。