松食堂を語る上で避けて通れないのが、注文客の8割以上が迷わず頼む看板商品「チャーシューメン」の存在です。運ばれてきた瞬間、視界のすべてを覆い尽くす圧巻の肉の絨毯。中央にわずかに添えられた刻みネギとメンマ以外、麺の姿は完全に覆い隠されています。
このチャーシューの仕立てに、松食堂の並々ならぬ技術が凝縮されています。使用されるのは厳選された豚バラ肉。煮崩れさせず、かといって硬さを一切残さない絶妙な火入れが施されています。タレの味が肉の芯まで染み渡り、噛みしめるたびにジュワリと広がる豚肉本来の野性味あふれる旨味と脂の甘み。脂身と赤身のバランスが緻密に計算されているため、これほど大量の肉を口に運んでも、後半に特有の重さや胃もたれを感じさせません。
そして、その肉を受け止めるスープの特徴がまた秀逸です。豚骨を濁らせることなく極限まで透き通らせた琥珀色のスープに、会津の醸造技術が生んだキレのある醤油ダレをブレンド。レンゲですくって口に運ぶと、まず心地よい醤油の香気と出汁のまろやかな甘みが鼻腔を抜けます。食べ進めるうちに、表面を覆うチャーシューから煮汁と良質な脂がスープへと徐々に溶け出し、時間の経過とともにスープ自体のコクと厚みが劇的に増していく構造になっているのです。
この極上スープを余すところなく持ち上げるのが、喜多方名物の多加水熟成平打ち太縮れ麺。しっかりとした手揉みによる不規則なウェーブが唇を跳ねるように滑り込み、モチモチとした強いコシが肉の弾力と見事な協奏曲を奏でます。メニューは「ラーメン」と「チャーシューメン」、そして各大盛りのみという徹底的なシンプルさ。サイドメニューやトッピングで誤魔化さない潔い姿勢に、老舗のプライドが宿っています。