国家主導のプロパガンダを爆発的に拡散させた主犯は、他ならぬ当時の報道・出版メディア業界だった。新聞社や出版社は軍部の検閲と弾圧に怯えながらも、同時に「戦争報道が部数を伸ばす」という商業的現実に強く引きずられていた。
各紙は競い合うように煽情的な見出しを掲げ、中国側の残虐行為を書き立てて大衆の復讐心を煽った。ラジオ放送は戦況の「大本営発表」をドラマチックに演出し、雑誌は勇壮なグラビアで戦意を高揚させた。批判的な言論は非国民として糾弾され、言論界全体が自発的な同調圧力に屈していった。メディアが権力の監視役を放棄し、世論を煽る装置と化したとき、社会全体が集団催眠に似た暴走状態へ陥るという痛烈な教訓がここに刻まれている。