物語の最大の魅力は、思わず吹き出してしまう軽妙なテンポ感と、胸を打つ泥臭い人間模様が見事に同居している点にある。本作は単なるコメディ映画の枠に収まらない。一見すると日常のたわいもない雑談が、次第に人生の苦悩や家族の絆という重厚なヒューマンドラマへと昇華していく。
ハサミの音がリズムを刻み、客たちが抱える挫折や希望がポロリとこぼれ落ちる。監督が仕掛けた数々のユーモアの裏には、生きづらさを抱える現代人への温かな視線が隠されている。軽快な笑いに油断していると、思いがけないラストで涙腺を揺さぶられることになるだろう。