この独特な祝祭空間を陰で支えているのが、北九州市内に拠点を置くみやび(貸衣装店)だ。全国の若者たちから注文が殺到するこの老舗では、半年前から衣装の仕立てや刺繍作業が昼夜を問わず続けられる。巨大な家紋、両親への感謝を綴った金文字、特注のファー飾り。総額が50万円から100万円を超えるケースも決して珍しくない。
なぜ、彼らはこれほどまでの大金をわずか数時間のイベントに投じるのか。和装・貸衣装業界の常識を覆すこのムーブメントについて、現場の職人はこう証言する。「彼らにとって、この日の衣装は自己顕示欲だけではない。地元の中学時代の仲間と結束を示し、育ててくれた親へ『ここまで大きくなった』と胸を張るための晴れ舞台なのだ」と。事実、工房を訪れる若者の多くが、高校卒業後から工事現場や工場で汗を流し、毎月の給料からコツコツと衣装代を積み立ててきた実情がある。