インターネット上の掲示板や動画サイトでは、草刈機の始動トラブルに関して様々な「裏ワザ」が語られていますが、中にはエンジンに致命的なダメージを与える危険な誤解が紛れ込んでいます。
代表的な誤解の一つが、「エンジンがかかりにくい時はパーツクリーナーやキャブクリーナーをエアクリーナー吸気口から直接大量に吹き込めばかかる」という手法です。確かに可燃性スプレーを吹き込むと強制的に初爆を起こすことは可能ですが、2サイクルエンジンは燃料中のオイルによってシリンダーとピストンを潤滑しています。脱脂作用の極めて強いパーツクリーナーを燃焼室に吹き込んでクランキングを行うと、シリンダー内壁の油膜が一瞬で洗い流され、金属同士が直接摩擦して致命的なエンジンの焼き付きを引き起こすリスクが跳ね上がります。吸気口からの吹き付けは、2サイクル専用の始動スプレー(スターティングフルード)をごく微量使用する場合を除き、原則として避けるべき危険行為です。
また、「リコイルが引けない時に機械用潤滑油(CRC-5-56など)をプラグ穴から大量に注ぎ込んで無理やり回す」という対処も極めて危険です。内部の固着が軽微なスラッジであれば一時的に動くこともありますが、焼き付きによってピストンリングがシリンダー壁に溶着している場合、無理なトルクをかけるとクランクシャフトが曲がるかピストンが割れ、修復不能の全損に至ります。