お茶の間の記憶に鮮烈に残っているのが、日本放送協会(NHK)の人気長寿番組『きょうの料理』への出演である。着物姿で手際よく、かつ優雅に季節の味覚を仕立てる姿は、当時の視聴者に新鮮な衝撃を与えた。
当時の制作スタッフの間では、今も語り草となっているエピソードがある。台本通りに進めることよりも、食材への感謝や器との調和、もてなす相手への気配りを何よりも優先させたという。テレビカメラの前であっても、京都の茶室にいるときと寸分違わぬ自然体で臨み、茶懐石のエッセンスを家庭料理に落とし込む独自の工夫を惜しみなく披露した。