幕内や十両の土俵入りで観客を魅了する化粧まわしは、相撲界における「格式とパトロンシップの象徴」です。化粧まわしの相場は一般的に150万〜500万円前後と幅広く、京都の西陣織などをベースに、熟練の刺繍職人が数カ月におよぶ手作業で立体的な日本画や家紋、企業ロゴなどを縫い上げます。糸の太さや金銀糸の使用量、手刺繍か機械刺繍かによって制作費は劇的に変動します。
なかでも相撲史に燦然と輝く化粧まわし最高額の事例として語り継がれているのが、若乃花・貴乃花兄弟の全盛期に佐川急便から寄贈された「ダイヤモンド入り化粧まわし」です。燦然と輝く大粒の天然ダイヤモンドがふんだんに散りばめられ、当時の報道や関係者の証言では推定1億円以上と見積もられました。さらに、元大関・高見盛が締めた不二家「ペコちゃん」の化粧まわしや、現代の横綱が締める人間国宝・著名現代美術家が手がけた特注品など、額面以上の文化財的価値を持つ逸品が数多く存在します。
これらの高額な化粧まわしは、基本的にタニマチ化粧まわし寄贈という形で力士の手元に渡ります。個人の篤志家や地元後援会、あるいは大手スポンサー企業が、力士の十両昇進や幕内昇進、三役昇進といった節目に合わせて贈呈します。企業にとってはテレビ中継やメディア露出を通じた広告塔の役割を果たすと同時に、タニマチにとっては「我が推し力士の土俵入りを支えている」という無上の名誉と承認欲求を満たす装置として機能しています。