ちあきなおみの生き方を語るうえで避けて通れないのが、1978年に結婚した俳優・郷鍈治さん(宍戸錠さんの実弟)との濃密な絆です。幼少期から米軍キャンプで歌い、興行界の荒波にもまれながら傷ついてきた彼女にとって、郷さんは単なる配偶者ではなく、人生で唯一心を許せる絶対的な防波堤でした。
1992年9月11日、肺がんのため郷鍈治さんが55歳の若さで他界。出棺の際、火葬炉の前で棺にすがりつき「私も一緒に焼いて!」と叫んで号泣したシーンは、当時のワイドショーでも大きく報じられ、日本中に衝撃を与えました。夫の死の直後、事務所を通じて出された「静かに暮らしたい」というコメントを最後に、彼女はマイクを置き、公の場から姿を消しました。
あれから30年以上が経過した現在も、郷鍈治さんの墓参りを欠かしたことはありません。毎年9月11日の命日や春秋の彼岸には、都内の霊園に黒い日傘を差した彼女の姿が目撃されています。墓前に手向けられるのは、決まって夫が好きだった花。墓石を丹念に磨き上げ、長い時間手を合わせる姿は、二人の愛が現在進行形で続いていることを何よりも雄弁に物語っています。