日常的な違和感を放置し続けた結果、どのような事態が待ち受けているのでしょうか。都内の歯科医療現場で日々患者と向き合う歯科衛生士への取材や臨床データからは、深刻な実情が浮き彫りになっています。
「『舌で触るとザラザラするけれど、痛くないから半年放置していた』とおっしゃる初診患者さんの口腔内を拝見すると、ほぼ例外なく歯肉縁下(歯周ポケットの奥深く)まで黒褐色の歯石がびっしりと固着しています」と現場の歯科関係者は語ります。歯石そのものは無毒ですが、その表面は多孔質で無数の歯周病菌が定着する温床となります。
初期の段階では、歯肉が赤く腫れて出血する「歯肉炎」にとどまりますが、ザラついた歯石が歯周ポケット内へ侵入していくと、生体防御反応として周囲の歯槽骨を溶かす「歯周炎」へと確実に移行します。恐ろしいのは、歯槽骨が溶けていく過程で強い痛みがほとんどない点です。舌先のザラつきという微かなSOSサインを無視し続けた結果、気づいた時には歯がグラグラになり、抜歯を余儀なくされるケースが後を絶ちません。