朝ドラ『ちむどんどん』の全125話にわたる脚本を単独で執筆した人物は、劇作家・脚本家の羽原大介(はばら だいすけ)氏です。ドラマ放送中、ネット上では「新人の稚拙な脚本ではないか」といった心ない中傷も散見されましたが、実際の羽原氏は日本の映画・演劇界を牽引してきた超実力派のベテラン作家です。
羽原氏は劇団「新宿芸能社」(現・昭和芸能潜水隊)を旗揚げし、泥臭くも温かい昭和の人情喜劇で多くの観客を魅了してきました。映像分野への進出後、その才能は瞬く間に開花します。2005年公開の映画『パッチギ!』、そして2006年の『フラガール』では、いずれも井筒和幸監督や李相日監督とタッグを組み、日本アカデミー賞最優秀脚本賞を連続受賞するという快挙を成し遂げました。過酷な現実の中でたくましく生きる市井の人々を活写する筆力は、業界内でも屈指の評価を獲得しています。
さらにNHKの朝ドラにおいても、羽原氏はすでに絶大な実績を残していました。2014年度後期に放送された連続テレビ小説『マッサン』です。ニッカウヰスキーの創業者夫妻をモデルに、初の外国人ヒロインを迎えた同作は、期間平均視聴率21.1%(関東地区・ビデオリサーチ調べ)を記録。異文化の壁を乗り越える夫婦の愛と情熱を骨太に描き切り、国民的人気ドラマへと押し上げました。それだけの実績を誇るヒットメーカーが起用されたにもかかわらず、なぜ『ちむどんどん』では苛烈な逆風に晒されることになったのでしょうか。