辞書編纂の観点から見ると、両者の扱いには興味深い特徴がある。『広辞苑』や『新明解国語辞典』といった代表的な国語辞典を紐解くと、多くの場合「十分」と「充分」は同義語として同一の見出し語で扱われている。デジタル時代のWeblio辞書などの検索サービスでも、両者は相互に参照される関係にある。
ただし、言葉の持つ微細なニュアンスの解説においては、解説に差が見られることもある。「十分」が客観的・数量的な充足(例:10人の枠に対して10人集まった)を表すのに適しているとされるのに対し、「充分」は主観的・感情的な満たされ方(例:気持ちは十分に伝わった、満足した)を表す際に好まれるという見解だ。辞書編纂者たちは、この表記の揺らぎを単なる誤用ではなく、日本語の豊かな表現力の一環として記録している。