1980年代半ば、日本の茶の間に巻き起こった「ケント旋風」は凄まじかった。大きな黒縁メガネを手で持ち、カメラに向かって前に押し出したり引き戻したりしながら目玉を大きく見せる動作は、子どもから大人まで瞬く間に模倣する社会現象となった。当時、弁護士としても活動していたケント・ギルバートと共に「ダブルケント」と称され、知性とユーモアを兼ね備えた外国人タレントのパイオニアとして大ブームを巻き起こしたのだ。
彼らが登場する以前の日本のメディア環境において、海外出身のタレントはどこか遠い存在、あるいは「客観的な解説者」として扱われることが多かった。しかし、彼は自ら道化となり、日本語のニュアンスを巧みに操りながらスタジオの爆笑を誘った。その親しみやすさこそが、お茶の間の壁を取り払い、お笑いの最前線へ躍り出た最大の勝因だったと言える。