この特異なスタイルはいかにして誕生したのか。ラーメンショップさつまっ子のルーツと歴史を紐解くには、昭和後期の外食産業におけるフランチャイズ胎動期へ遡る必要があります。
1970年代、大田区羽田周辺を発祥とするラーメンショップは、フランチャイズ料を厳格に徴収して統制する現代型ビジネスではなく、「麺とタレを本部から仕入れれば、あとは店主の裁量を大幅に認める」という極めて緩やかなネットワークで急速にロードサイドへ拡大しました。その過程で、九州・鹿児島(薩摩)地方にルーツを持つ創業者や仕掛け人が、関東の豚骨醤油スープに九州ラーメンの伝統技法である「揚げネギ(焦がしネギ)」をハイブリッドさせたことが、「さつまっ子」の起源とされています。
当時の現場を知る古参関係者は、看板に刻まれた屋号について次のように述懐しています。
「昭和の時代、街道沿いのドライバーや港湾・工場地帯の労働者を惹きつけるため、各店主が独自に味を進化させることが許されていた。『さつまっ子』は鹿児島風の焦がしラードの技法を持ち込み、それが京浜工業地帯の労働者に爆発的に受けた。本家との対立というより、昭和ならではの大らかな職人気質が生んだ現場発信のイノベーションだった」
こうして「さつまっ子」は、通常のラーショ網の枠組みを借りながらも、事実上の独立分派ブランドとして独自の暖簾分けネットワークを形成していきました。