タクティールケアが最もその崇高な力を発揮する場所の一つが、緩和医療・終末期ケアの最前線だ。
病状が進行し、意識が混濁したり、発語すら困難になった終末期の患者は、激しい身体的苦痛と「死への恐怖・孤独」というスピリチュアルペインに苛まれる。医療用麻薬を用いても取り切れない不穏状態に直面したとき、ベッドサイドで患者の背中や足先を包み込むタクティールケアは、非言語的な「安全のメッセージ」として機能する。
「自分は一人ではない」「尊重されている」という皮膚感覚を通じた安心感は、せん妄を鎮め、死の恐怖を和らげる。家族が「自分にはもう何もしてあげられない」という無力感に苛まれる終末期において、家族自身が患者の肌に触れてケアに参加できる点も、看取りの質を根本から高めている。