日本のこんにゃく加工史における最大のブレイクスルーは、江戸時代中期の農民であり発明家であった中島藤右衛門によってもたらされた。彼は1770年代、水分が多く痛みが早かったこんにゃく芋を乾燥させて粉末化する「荒粉(あらこ)製法」を発明。この技術革新により、長距離輸送と通年保存が可能となり、日本全国の庶民へ広く普及する決定的な引き金となった。
現在、その一大生産拠点として圧倒的なシェアを誇るのが群馬県だ。水はけの良い火山灰土壌と昼夜の寒暖差が大きい気候風土が、高品質なこんにゃく芋の育成に最適とされる。農林水産省が発表する生産統計でも、国内産こんにゃく芋の9割以上を群馬県が占めており、名実ともに日本一の産地として君臨する。
業界の品質向上を担う日本こんにゃく協会によると、刺身用として出荷される製品には、通常の板こんにゃくよりも高い水分保持力と微細な気泡構造が求められるという。生芋から作る伝統の手延べ技術や、気泡を絶妙に抱き込ませる特殊成形によって、タレや醤油が心地よく絡むあの滑らかな舌触りが生まれているのだ。