岡田茉莉子のキャリアを語る上で欠かせないのが、世界的巨匠・小津安二郎との出会いである。遺作となった『秋刀魚の味』(1962年)などで見せた、知的で現代的な女性像は、小津映画の様式美のなかで鮮烈な光を放った。
しかし、彼女の真骨頂はそこからの劇的な転換にある。松竹ヌーヴェルヴァーグを牽引していた吉田喜重と結ばれた彼女は、自ら独立プロダクション「現代映画社」を設立し、プロデューサー兼主演として果敢な挑戦を開始した。その頂点とも言える傑作『エロス+虐殺』(1970年)では、既成概念を打ち破るアヴァンギャルドな映像美と前衛的な演技を披露。メジャースタジオの看板女優から前衛芸術の開拓者へと脱皮したこの軌跡は、世界の映画史を見渡しても極めて稀有な例といえる。