千日前から法善寺横丁へと抜けると、足元はしっとりとした石畳に変わる。苔むした水掛不動尊のすぐ傍らで、かつてこの無頼な街を愛した文豪・織田作之助の影を探さずにはいられない。名作『夫婦善哉』に描かれたような、庶民の逞しさと哀愁、そして何より食への執着が、今もこの界隈の空気には濃密に漂っている。
横丁に並ぶ老舗の暖簾をくぐれば、時代が変わっても揺らがない大阪の味覚の原点に出会える。甘味処でいただく素朴なぜんざいや、出汁の効いたうどん。そこには、流行を追うだけでは決して生み出せない、何世代にもわたって磨き抜かれてきた味の厚みがある。ただ胃を満たすのではなく、街の歴史そのものを味わう贅沢がここにある。