島原の町を歩けば、いたる所で清らかな水が音を立てて湧き出しています。国土交通省の「名水百選」にも選定されている長崎島原湧水群は、1792年の雲仙岳噴火(島原大変)に伴う地殻変動によって湧出量が一気に増加したと伝えられています。日量20万トンを超える豊富な地下水に恵まれたこの地で、自然の恩恵を最大限に活かして誕生したのが長崎郷土料理かんざらしです。
その名の起源は、原料となるもち米の製法にあります。大寒の厳しい冷水にもち米を浸し、石臼で水ごと挽いて沈殿させた後、天日干しして粉に精製する作業を「寒ざらし(かんざらし)」と呼びました。江戸時代、島原藩の城下町では、この極めて細やかな粉を丸め、年中約15度前後を保つ清冽な湧水で急冷した団子に、蜜をかけて来客をもてなしたのが始まりとされています。
砂糖や水飴が貴重だった時代、かんざらしは藩主への献上品や、武家・町家における最高級の「もてなしの甘味」でした。冷涼な湧水が天然の冷蔵庫として機能した島原だからこそ結実した、唯一無二の食文化といえます。