両者の実用面における違いは、「磁石の反応」「耐食性」「強度」の3点に集約されます。
多くの人が疑問に思う「スチールに磁石がつく理由」は、炭素鋼が強い強磁性を持つフェライト組織で構成されているためです。磁石を近づければ確実に吸着します。対してステンレスの場合、クロムやニッケルの配合割合(結晶構造)によって磁性が変わります。日用品や高級キッチンで多用されるオーステナイト系ステンレスは基本的に磁石がつきません。ただし、刃物などに使われるマルテンサイト系や、安価なフェライト系のステンレスには磁石がつくため、「磁石がつかない=すべてステンレス」と単純に決めつけることはできません。
次に、ステンレスが錆びる理由についてです。「ステンレスは永久に錆びない」と誤解されがちですが、条件が揃えばサビが発生します。表面の不動態皮膜は自己修復機能を持つものの、塩分や塩素系漂白剤が付着したまま放置されたり、金属粉が付着して起きる「もらいサビ」、酸素が遮断された隙間などでは被膜が再生できず、局所的な腐食が進行します。
ステンレスとスチールの強度比較においては、単純な引張強度や硬度だけで見れば、適切な熱処理を施した特殊スチール(炭素鋼)のほうが硬く強靭に仕上げられます。しかし、ステンレスは粘り強さ(靭性)と耐熱性に優れており、過酷な環境下でも脆くなりにくいという特性を持っています。