デヴィッド・ボウイやYMOといった巨星たちの伝説的な瞬間の裏には、現場の張り詰めた空気と、予期せぬトラブルを歓喜へと転換させた知られざるドラマが無数に存在する。ロンドンの小さなアパートメントで衣装を縫い直し、現地の空気をダイレクトに作品へ落とし込んだ即興性。予定調和を嫌い、偶然生まれたハプニングをも作品のエネルギーへと変えてしまう直感力こそ、高橋靖子の真骨頂だった。
デジタル技術でいくらでも画像を加工・生成できる現代において、身体と布地、そして現場の熱気だけを頼りに生み出された彼女の仕事は、圧倒的なリアリティを放ち続けている。単なるレトロ趣味としての回顧ではない。表現とは何か、人と人との魂がスパークするコラボレーションとはどうあるべきかという根源的な問いに対する答えが、彼女が創り上げたカルチャー史の全貌の中に凝縮されている。