「二所ノ関部屋のおかみ」を語る上で、決して外すことができない存在が、先代の二所ノ関親方(元大関・若嶋津)の妻である高田みずえさんです。「そんなヒロシに騙されて」「硝子坂」などの大ヒット曲で知られた昭和のトップアイドルだった彼女は、1985年に若嶋津と結婚し、絶頂期に芸能界を電撃引退しました。
松ヶ根部屋の創設から、名跡変更による旧二所ノ関部屋の運営に至るまで、高田みずえさんは30年以上にわたり女将として角界に人生を捧げました。弟子たちに惜しみない愛情を注ぎ、怪我や伸び悩みに苦しむ若手がいれば我が子のように抱きしめて励ますその姿は、テレビ番組などを通じて「理想のおかみ像」として日本全国に広く浸透しました。2017年に夫の若嶋津が脳梗塞で倒れた際にも、献身的な介護で奇跡的な回復を支え抜いたエピソードは多くの感動を呼びました。
高田みずえさんの現在についてですが、夫が日本相撲協会の定年を迎えた2022年以降、相撲部屋の第一線を完全に退き、穏やかなシニアライフを過ごしています。長女でタレントのアイリさんや長男の家族とともに温かな時間を過ごしつつ、時折メディアで往年の思い出を振り返る姿には、長年の重責を果たし終えた充実感が漂っています。現在の二所ノ関部屋のおかみが「組織マネジメント型」であるのに対し、高田みずえさんはまさに昭和・平成の「情愛と献身の象徴」であり、歴代おかみの系譜における偉大な道標です。