医療機関から退院して在宅介護へ移行する際や、介護老人保健施設(老健)・特別養護老人ホーム(特養)への入所にあたり、ESBLの保菌が判明したことで現場が混乱するケースが後を絶ちません。
厚生労働省や関連学会の指針では「ESBL保菌のみを理由とした入所拒否や過度な行動制限は不適切」と明記されています。しかし、現場の介護職員や家族のコミュニティでは次のような切実な声が聞かれます。
「退院支援カンファレンスで『耐性菌がいます』と告げられ、まるで危険人物のように扱われてショックを受けた」「施設側から個室対応を求められ、追加費用やスタッフの対応に温度差があって戸惑った」という家族の相談は非常に多く見られます。一方、介護従事者側からも「限られたワンオペ夜勤の中で、どこまで厳格にエプロンや手袋を交換すべきか現場判断に迷う」といった葛藤が吐露されています。
介護現場における混乱の本質は、「耐性菌=毒性が極めて強い危険な病原体」という誤認にあります。ESBL産生菌は薬が効きにくい性質を持つだけであり、菌自体の毒力(病原性)が一般的な大腸菌より強いわけではありません。現場で求められるのは、パニックによる過剰対応ではなく、誰に対しても等しく行うべき衛生管理の実践です。