ガチャピンの歴史を語る上で欠かせないのが、その声を形作ってきた声優陣の系譜です。1973年4月2日にフジテレビ系列で放送がスタートした幼児教育番組『ひらけ!ポンキッキ』において、ガチャピンは南国生まれの恐竜の子供(5歳)として誕生しました。その最初の命を吹き込んだのが、声優の雨宮玖二子(旧名:矢沢邦江/矢沢玖二子)です。
雨宮は、少し鼻にかかった甘さと、おっとりしていながらどこか芯のある少年ボイスを見事に作り上げました。彼女が担当した期間は、1973年の番組開始から2014年3月までの実に41年間に及びます。日本のテレビ放送史において、同一キャラクターの声を同一人物が40年以上担当し続けた例は極めて稀であり、サザエさんやドラえもんと並ぶ驚異的な記録といえます。昭和から平成中盤にかけて育った世代にとって、「ガチャピンの声=雨宮玖二子の声」として完全に刷り込まれています。
転機が訪れたのは2014年春でした。BSフジで放送されていた『beポンキッキーズ』の放送枠において、告知なしに声質の変化が確認されました。新たにバトンを引き継いだのは、『赤ずきんチャチャ』のチャチャ役や『遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX』の丸藤翔役などで知られる実力派声優・鈴木真仁です。鈴木は初代が築き上げた独特の発音アクセントや柔らかな声質を極めて高い精度でトレースしつつ、より現代的な滑舌の良さを吹き込みました。
さらに2018年3月にポンキッキシリーズの地上波・BSレギュラー放送が終了し、同年7月にYouTubeチャンネル「ガチャピンちゃんねる【公式】」が開設されて以降は、デジタルプラットフォームへの適応が進められました。2026年現在のガチャピンの声は、鈴木真仁が確立したアプローチを基盤としつつ、イベントの生配信や多面的なメディア展開に対応した盤石の制作体制によって維持されています。