この事故で最も厳しい追及がなされたのが、熱中症AED対応を含む初動の救命措置です。学校敷地内には自動体外式除細動器(AED)が設置されており、倒れた場所からわずか数十メートルの距離にありました。しかし、救急隊が現場に到着するまでの約10分間、AEDのパッドが生徒の胸に貼られることは一度もありませんでした。
なぜ救命器具が目の前にありながら使われなかったのか。その背景には、教育・スポーツ現場で頻発する「正常バイアス」と「死戦期呼吸(しせんきこきゅう)の誤認」が存在していました。
倒れた直後、生徒の口がパクパクと動き、胸がかすかに上下していたため、居合わせた指導者や関係者は「自発呼吸がある」と判断してしまいました。しかし、これは心停止直後に見られる反射運動である死戦期呼吸であり、実質的な酸素供給は完全にストップしていたのです。もしこの段階ですぐにAEDを装着し、音声ガイダンスに従って電気ショックと胸骨圧迫を行っていれば、助かる可能性は十分にありました。現場の知識不足と誤った判断が、救命のタイムリミットを押し流してしまったのです。