藁焼きの炎は一瞬で摂氏800度から900度に達する。ガスや炭火では絶対に生み出せないこの超高温こそが、鰹の生臭さを完全に焼き切り、皮下に凝縮された脂の旨味を一気に閉じ込める生命線だ。焼き網の上で数秒、職人の研ぎ澄まされた勘だけが肉の芯に熱が届きすぎる手前を見極める。出来上がったタタキは、外側がパリッと香ばしく、中は驚くほど瑞々しい深紅のレア状態を保っている。
この極上のタタキを支えているのが、自社船団による土佐の一本釣りだ。網で獲る魚はどうしても魚体同士が擦れ合って傷みやすい。しかし、一本釣りは釣り上げた瞬間に活き締めされ、急速冷凍あるいは徹底した温度管理で港へと運ばれる。株式会社明神水産の創業者精神を受け継ぐ明神正忠らの船団が命がけで釣り上げた一級品の鰹だからこそ、藁の強い薫煙に負けない濃密な赤身の味が成立するのだ。