高山みなみさんの名を不動のものにした代表作には、制作現場での運命的な出会いや緻密な演技設計が隠されています。当時の制作資料やインタビュー記録からその深層に迫ります。
『魔女の宅急便』キキとウルスラの一人二役が生まれた背景
1989年に公開されたスタジオジブリの名作『魔女の宅急便』において、主人公のキキと森に住む絵描きの少女ウルスラの二役を高山さんが演じ分けたエピソードは、アニメファンの間で今なお語り草となっています。
当初、高山さんはウルスラ役としてオーディションに参加していました。しかし、キキ役のキャスティングが難航していた宮崎駿監督が、高山さんの声の持つ伸びやかさと表現の柔軟性に注目。「キキも演じてみてほしい」と打診したことがきっかけでした。13歳の少女が抱える不安と好奇心を見事に表現したキキの声と、少し大人びて達観したウルスラの声。声優界でも極めて珍しい「同一作品内でのメインキャラクター一人二役」は、高山さんの抜きん出た音域操作と人物解釈力によって結実した歴史的名演です。
『名探偵コナン』江戸川コナン役と原作者・青山剛昌氏との信頼
1996年に放送を開始した『名探偵コナン』の江戸川コナン役は、高山さんのキャリアを代表する金字塔です。このキャスティングの布石となったのが、1993年放送の『剣勇伝説YAIBA』でした。
原作者の青山剛昌氏は、鉄刃(くろがね やいば)を熱演する高山さんのリズム感と歯切れの良い発声に強い信頼を寄せていました。コナンは「見た目は子ども、頭脳は大人」という二面性を持つ極めて難度の高いキャラクターです。子ども向けの猫なで声と、推理時に見せる鋭利で冷徹なトーンのスイッチングは、高山さんの職人的なマイクワークがあってこそ成立しました。膨大な情報量を淀みなく伝える長文の推理セリフを、視聴者を飽きさせずに引き込むテンポ感で成立させる技術は、まさに唯一無二といえます。
『忍たま乱太郎』猪名寺乱太郎役が持つ30余年の安心感
NHKで1993年から放送され続けている『忍たま乱太郎』の猪名寺乱太郎役では、コナンの知性とは対照的な「どこにでもいる、少しおっちょこちょいでお人好しな子ども」の等身大の可愛らしさを表現しています。共演するきり丸役の田中真弓さん、しんべヱ役の一龍斎貞友さんとの掛け合いは、長年培われた阿吽の呼吸により、日本のアニメ界における最高のアンサンブルとして世代を超えた支持を集めています。