歌舞伎の序列を語る上で、名門の家柄以上に役者の日常生活とプライドを二分しているのが「名題(なだい)」と「名題下(なだいした)」の違いです。これは相撲界における「関取(十両以上)」と「幕下以下」の格差に匹敵する、劇界の絶対的な階級制度です。
名題役者になるためには、一定の実務経験を積んだ上で「名題適任証」を取得し、さらに名題昇進試験に合格しなければなりません。合格して名題披露を行って初めて、楽屋で個別の化粧前(鏡台)が与えられ、番付に独立して名前が大きく記載され、舞台上で台詞のある本格的な役を演じる資格を得ます。
一方、名題試験に合格していない役者は「名題下」と呼ばれます。彼らは大部屋での共同生活を余儀なくされ、舞台上では通行人や捕手、腰元などのエキストラに近い役(立役・端役)を務めます。さらに、舞台の合間には師匠の身の回りの世話や着付けの手伝い、楽屋の雑務をこなさなければなりません。
この身分制度は、そのまま歌舞伎役者 年収 格差へと直結します。公的資料や関係者の証言に基づく推計データから、そのシビアな金銭構造が見えてきます。
- 幹部役者・人間国宝クラス:年間推定収入 5,000万円〜1億円以上(歌舞伎座の出演料に加え、テレビ出演、CM契約、全国巡業、後援会からの手当など)。
- 中堅・名題役者(幹部待遇以下):年間推定収入 500万円〜1,500万円程度(年間8〜10カ月の舞台出演手当が中心。役の大きさによって大きく変動)。
- 名題下役者(一般弟子・大部屋):年間推定収入 200万円〜350万円前後(1回の興行出演料は十数万〜二十万円台。舞台出演のない月は収入が激減するため、師匠の手当やアルバイトで生計を維持するケースも少なくない)。
松竹が組織する歌舞伎 幹部役者 序列においては、最高位の「幹部」から「幹部待遇」「名題」「名題下」へと厳格にランク分けされており、劇場の楽屋口を入った瞬間から、誰が先に挨拶をし、誰がどのエレベーターに乗るかまで、すべてこの序列に従って行動が規定されています。