5人もの命を奪った重大事件でありながら、片岡仁左衛門事件の裁判判決は法曹界や世間に大きな議論を巻き起こしました。東京地方裁判所が下した判決は「無期懲役」でした。
通常、複数人を殺害した強盗殺人や計画殺人の場合、極刑である死刑が適用されるのが通例です。しかし、裁判長は判決理由において、以下の情状を極めて重く受け止めました。
第一に、終戦直後の極限的な食糧事情と飢餓状態が犯行の心理的背景にあったこと。第二に、戦前の旧態依然とした身分格差的な主従関係において、被告が精神的・肉体的に極度に追い詰められていた事実が認められた点です。この異例の司法判断は、当時の社会構造の歪みと混乱を象徴する判例として、今なお昭和犯罪史に深く刻まれています。