晩年、彼が心血を注いだのが、2018年に放送されたスペシャルドラマ『眠狂四郎 The Final』でした。かつて父・阪東妻三郎も演じた剣豪役、そして自身の若き日の代表作でもある作品の完結編に、彼は並々ならぬ覚悟で臨みました。長年培ってきた殺陣の美しさと、静寂の中に漂う哀愁は、まさに役者人生の集大成と呼ぶにふさわしいものでした。
自身の表現に一切の妥協を許さず、潔く表舞台から身を引く決断を下したのもまた、彼らしい美学のあらわれでした。「美しい田村正和」のイメージをファンの心に残したまま静かにマイクを置いたその生き様は、共演者や業界関係者に深い感銘を与えました。完璧主義を貫き通した伝説の舞台裏には、最後まで演技と視聴者への誠実さを失わなかった孤高のプライドが存在していました。