マフィアが秘密裏に社会を侵食する「見えない影」だとすれば、ストリートギャングは都市の街頭で目に見える暴力を行使する「日常の脅威」です。
アメリカにおける代表的なギャングである「クリップス(Crips)」「ブラッズ(Bloods)」や、エルサルバドル系移民を中心に凶悪化した「MS-13(マラ・サルバトルチャ)」に象徴されるように、ストリートギャングは特定の人種、地域、貧困層の若者たちが自衛や所属感を求めて結束することから始まります。特定のシンボルカラー、ハンドサイン、タトゥーで帰属意識を誇示し、縄張りの防衛や拡大のために凄惨な抗争を繰り返します。
ここで注目すべきは、麻薬カルテルとの力関係です。メキシコやコロンビアを拠点とする麻薬カルテルは、軍隊並みの重武装と天文学的な資金力を持つ独立した軍閥組織です。麻薬カルテルにとって、アメリカ国内や海外のストリートギャングは「自陣営の軍隊」ではなく、国境を越えて持ち込んだコカインやフェンタニルを路上で売り捌かせる「下請けのディストリビューター(末端販売代理店)」に過ぎません。
日本の治安情勢に目を向けると、近年猛威を振るう「半グレ」や、警察庁が取り締まりを強化している「匿名・流動型犯罪グループ(通称:トクリュウ)」は、このストリートギャングの構造に極めて酷似しています。特定の組事務所を持たず、SNSを通じて「闇バイト」感覚で実行犯を集め、オレオレ詐欺や強盗を繰り返すトクリュウは、まさに日本版のデジタル・ストリートギャングと呼べる進化を遂げています。