日常会話や検索ワードでは「繰り返す漢字」と表現されがちですが、「々」が漢字ではない真相は、文字コード規格や日本語の文字体系の分類を見れば一目瞭然です。国際規格であるUnicodeにおいて、「々」は漢字(CJK統合漢字)の領域ではなく、「CJKの記号及び句読点(CJK Symbols and Punctuation)」という記号エリア(コードポイント:U+3005)に配置されています。
正式名称は「同の字点」|文字ではなく「踊り字」の一種
「々」の正式名称は同の字点(どうのじてん)と呼びます。ほかにも「漢字返し」や「同点」といった別称が存在します。日本語の表記体系において、同じ文字や音の繰り返しを表す特殊な記号全般を「踊り字(躍り字・おどりじ)」または「繰返し符号(重ね字)」と総称しますが、「々」はその中でも「直前の漢字1文字をそのまま繰り返す」機能に特化した記号です。 一般にノマと呼ばれる理由は、字形を分解するとカタカナの「ノ」と「マ」を縦に組み合わせたように見えるためです。活版印刷の植字工や現代のタイポグラフィの現場では、口頭での指示を簡潔に伝える符牒(現場の通称)として「ノマ」という呼び名が定着しました。
古代木簡から続く踊り字の歴史と経緯
記号としての歴史は極めて古く、踊り字の歴史と経緯は古代中国の甲骨文字や青銅器の金文、さらには日本の奈良・平安時代の木簡(もっかん)にまで遡ります。 当時、同じ文字を連続して筆記する際の手間を省くため、文字の右下や下に「=」のような2本線(重文符・二の字点)を付記する習慣がありました。これが平安時代から鎌倉時代の古文書、漢文訓読の過程で草書体へと変化し、室町時代から江戸時代にかけて「同」という文字の草書体が極限まで簡略化された結果、現在の「々」のフォルムへと収斂していったと國語学の資料では説明されています。つまり、「々」は新しいデジタル時代の略記ではなく、千年以上受け継がれてきた日本の筆記文化の知恵が生み出した機能美なのです。