釜浅商店が位置する合羽橋道具街には数十軒の厨房機器店が軒を連ねていますが、同店の存在感は突出しています。明治41年に初代・熊澤浅吉が創業して以来、100年以上にわたり「料理人が使い続けるための実用美」を追求してきました。4代目店主・熊澤大介氏のもとで行われたリブランディング以降、その姿勢はより先鋭化しています。
料理人の道具に対する要求は極めてシビアです。単に切れ味が良い、熱伝導率が高いというスペックだけでなく、長時間の厨房作業に耐えうる堅牢さや手馴染みの良さが求められます。釜浅商店で扱われる製品は、日本各地の鍛冶職人や鋳物工房と直接対話を重ね、現場の声を取り入れて形作られたものばかりです。この徹底した現場主義こそが、多くの料理人を惹きつけてやまない第一の理由といえます。
さらに、その影響力は国境を越えています。2018年にはフランス・パリのサンジェルマン・デ・プレ地区に「釜浅商店 パリ支店」を開設。欧州のトップシェフたちに対し、日本の包丁の構造や炭火調理の妙味、南部鉄器の保温性を現地で伝導してきました。「KAMA-ASA」の名は、いまや世界のガストロノミー界において高品質な日本式料理道具の代名詞として定着しています。