北海道の森林地帯全域を見渡したとき、生態系のバランスはここ数十年で不可逆的な変化を遂げています。かつて絶滅すら危惧された時代から一転、現在では道内の森林面積のほぼ全域にヒグマが定着し、かつて「空白地帯」と見なされていた農村部や都市近郊の緑地帯にまでその足跡が刻まれるようになりました。
北海道環境生活部公式発表のデータや北海道立総合研究機構(道総研)の調査によると、1990年に長年続いた「春グマ駆除制度」が廃止されて以降、個体数は急速に回復。かつて約5,000頭前後と推計されていた全道の個体数は、ヒグマ生息数推移最新データにおいて約1万1,700頭から1万2,000頭規模へと倍増していることが確認されています。この数値の増加とともに作成されたヒグマ北海道分布図を検証すると、従来の高密度地域であった知床や日高山脈だけでなく、石狩平野を取り囲む丘陵地帯や渡島半島に至るまで、生息圏が外縁部へ押し出されるように拡大している現実が浮き彫りになります。
とりわけ際立っているのが、世界自然遺産として名高い知床半島における極端な過密状態です。手つかずの自然が残る一方で、縄張りを巡る激しい闘争や餌場の奪い合いが日常化しており、若い個体が新たな居場所を求めて低地や周辺自治体へと流出せざるを得ない構造が生み出されています。