佐藤一斎が遺した膨大な語録のなかでも、最も人口に膾炙(かいしゃ)し、現代のリカレント教育やリスキリングの原点とも称されるのが「三学戒(さんがくかい)」です。 「少にして学べば、則ち壮にして為すことあり。壮にして学べば、則ち老いて衰えず。老いて学べば、則ち死して朽ちず」 (『言志後録』第42条) この言葉の現代語訳と本質は、次のように要約されます。
- 少年のころに学んでおけば:血気盛んな壮年期を迎えたときに、社会で大きな仕事や貢献を成し遂げることができる。
- 壮年の働き盛りに学んでおけば:老年を迎えても気力や知性が衰えることなく、時代の変化に取り残されない。
- 老境に入ってからも学び続ければ:肉体が滅びて死を迎えた後も、その徳や遺した志は朽ち果てず、後世に生き続ける。
一斎は学ぶことを「立身出世のための手段」としてではなく、「人間として生きる本質そのもの」と定義しました。年齢を言い訳にして成長を止めてしまう現代人に対して、鋭い警鐘と温かい励ましを同時に与えてくれる佐藤一斎の座右の銘の筆頭格です。 さらに、『言志録』を中心に遺された心に響く佐藤一斎の言葉には、日々の迷いを断ち切る珠玉の教訓が数多く存在します。 * 「志を立てて成功するには、恥をかくことが肝心である」 失敗や未熟さを恐れて体面を取り繕う者は大成しない。恥を恐れず挑戦し、自らの至らなさを自覚することこそが、真の器を育てる第一歩であると説いています。 * 「最も優れた人は天を師とし、次に優れた人は聖人を師とし、その次に優れた人は書物を師とする」 書物の知識を暗記するだけの頭でっかちを戒め、大自然の摂理や天命という絶対的な軸に照らして自らを律することの尊さを説いた教えです。 * 「心静かにして、自然が生み出す草花の様子を見ていると、少しの無理もなく、強いてやってやろうという作為もない」 焦りや功名心に駆られて空回りする心を鎮め、万物の自然な成長リズムに身を委ねる大切さを説く、メンタルマネジメントの極意です。