太道の読み方は「たいどう」です。名前に冠された「太」という文字には、「根源」「大いなる調和」「万物を包摂する力」という意味が込められており、単一の打撃技術に偏重することなく、あらゆる局面に対応できる普遍的な武の道を志向しています。
太道の創始者は井上寛(いのうえ ひろし)師範です。極真空手黎明期の過酷な稽古と実践を潜り抜けてきた井上師範は、当時のフルコンタクト空手が抱えていた競技上の制約——顔面殴打の禁止や掴み・投げの制限——に対し、武道としての実戦性に疑問を抱くようになりました。「路上や現実の危機において、直線的な打撃の打ち合いだけで身を守り切れるのか」という現場感覚に根ざした問題意識が、新たな武道体系の胎動へとつながります。
1978年前後に京都の地で立ち上げられた太道総本部を拠点に、井上師範は空手の鋭い打撃力に合気武術や柔道のエッセンスである「円の体捌き」「崩し」「関節技」を結合させました。相手の攻撃力を正面から力で受け止めるのではなく、円運動によって威力を無力化し、最小の力で制圧する独自の理論体系を確立したのです。