この犬種の歴史は、ユーラシア大陸を揺るがした歴史的英雄たちの記憶と強く結びついている。13世紀に世界帝国を築き上げたチンギス・ハンは、遠征軍の先頭に数万頭の軍犬として配置し、その圧倒的な威嚇力と忠誠心を兵器として運用したと伝えられている。
また、アジアからヨーロッパへと旅した大冒険家マルコ・ポーロも、その手記『東方見聞録』の中で「ロバのように大きく、ライオンのように獰猛な犬」と記し、西欧社会に初めてその存在を報告した。ヒマラヤの苛烈な自然環境と古代の戦争史を生き抜いてきた屈強な生命力こそが、この犬種に漂う独特の神聖さと畏怖の念の源泉となっている。