昭和後期から平成にかけて、日本の米シーンはコシヒカリ一強の時代を築き上げた。強い粘り、濃密な甘み、冷めても固くならないもっちり感。それらは確かに時代が求めたご馳走の味だった。しかし現在、米を取り巻く嗜好に明らかな変化が起きている。
「脂の乗った旬の魚や出汁の効いた煮物と合わせると、甘みの強い米はどうしても主張が勝ちすぎてしまう」——そう語る割烹の料理人は少なくない。油分を控えた現代的な和食文化や、素材そのものの輪郭を愛でる食事において、ササニシキの「あっさり、さらり」としたテクスチャーが見直されているのだ。
胃にもたれない軽快な消化感も、健康意識の高い生活者から支持される大きな理由だ。アミロース含有量が比較的高いため、糖の吸収が緩やかで食後感が心地よい。濃厚さ至上主義へのアンチテーゼとして、この潔い味わいが再評価されている。