2016年6月15日、マーリンズに所属していたイチローは、サンディエゴのペトコ・パークで行われたパドレス戦で2安打を放ち、日米通算4,257安打をマークしました。この瞬間、ピート・ローズが保持していたMLB歴代最多安打記録(4,256本)の数字を塗り替えたのです。
しかし、この偉業達成の前夜から、米国内では激しいメディア論争が勃発しました。火種となったのは、記録保持者であるピート・ローズ本人の発言でした。当時、USA TODAYをはじめとする現地メディアの直撃に対し、ローズは不満を露わにしました。
「イチローを『ヒットクイーン(安打女王)』に仕立て上げようとする連中がいる。日本での記録を足すなら、私のマイナーリーグ時代の427安打もカウントしなければ不公平だ。次は高校時代の記録まで足す気か」
この辛辣なコメントは瞬く間にSNSや全米のスポーツ番組で拡散され、全米の野球ファンを二分する騒動へと発展しました。この発言の背景には、野球界から永久追放処分を受け、唯一の誇りである「歴代最多安打記録」にしがみつかざるを得ないローズの個人的な焦燥感と、MLBこそが世界最高峰のリーグであり他国のプロ記録と同列に扱うべきではないという、アメリカ球界特有の自国優越主義が根深く横たわっていました。