イギリス(特にイングランド)の象徴として真っ先に名前が挙がるのがバラ(Rose)です。ラグビーのイングランド代表エンブレムや王室の紋章、20ペンス硬貨のレリーフなど、至るところに刻まれています。このバラが国花として定着した決定的な理由は、15世紀のイングランドを二分した内乱「薔薇戦争(Wars of the Roses / 1455年〜1487年)」にあります。
プランタジネット王家の分家であるランカスター家(赤バラの紋章)とヨーク家(白バラの紋章)が、王位継承権を巡って30年余りにわたり壮絶な争いを繰り広げました。激闘の末、ランカスター派のリッチモンド伯ヘンリー・テューダーがボズワースの戦いで勝利を収め、ヘンリー7世として即位。彼はヨーク家のエリザベス王女と結婚することで両家の和解を果たし、テューダー朝を開きました。
この和平の証として生み出されたのが、外側に赤い花びら、内側に白い花びらを配した統合紋章「テューダー・ローズ(Tudor Rose)」です。単なる植物の愛好にとどまらず、国家の分裂を防ぎ平和をもたらした奇跡のシンボルとして、バラはイングランドの誇り高い国花であり続けています。