近年、運動力学の研究者らによるアーカイブ映像のデジタル解析が進み、あの蹴りの恐るべき物理データが明らかになった。身長209センチメートル、体重135キログラムを超える巨体が前方へ踏み出す際、足先にかかる瞬間最大荷重は約800キログラム重に達していたと推計されている。
現代の打撃系格闘技における上段前蹴りと比較しても、その質量の重さは異次元だ。ロープのリバウンドによって加速した対戦相手(約100キログラム)と馬場の足裏が衝突するエネルギーは、軽自動車が時速20キロメートルで壁に衝突する衝撃に匹敵する。受身の技術を持たない人間であれば頸椎損傷は免れないレベルの破壊力が、あの涼しげな一撃に秘められていた。