連続テレビ小説『マッサン』で日本中の涙を誘った妻・竹鶴リタとのロマンス。しかし、ドラマのカメラが捉えきれなかった現実は遥かに過酷だった。第二次世界大戦中、敵国人として特高警察の監視下に置かれ、近隣住民からスパイ容疑の冷ややかな視線を浴び続けたリタ。彼女は自らの出自を呪うことなく、スコットランドの民謡を口ずさみながら夫の夢を支え続けた。
遺された手記や往復書簡には、戦時下の物資困窮と激しい結核の苦痛に耐えながら、夫が蒸留所に籠もる背中を見守り続けた孤独な闘病生活が綴られている。彼女の母国への望郷の念と、北の大地に骨を埋める覚悟。ドラマでは描ききれなかったリタの真の強さこそが、ウイスキーづくりの灯を絶やさなかった最大の防壁だった。