メガホンを取った福田雄一監督の演出術も、この怪演を語る上で欠かせない。福田組といえば役者のアドリブや素のリアクションを巧みに引き出すことで知られるが、海藤瞬のパートに関しても緻密な笑いの計算が張り巡らされていた。
端正な顔立ちを崩壊させる白目や変顔、叫び声のピッチに至るまで、現場では監督と吉沢の間で細かなディスカッションが重ねられた。国宝級イケメンと称されるビジュアルをあえて全力でドブに捨てるような振り切った芝居は、観客に強烈なカタルシスを与えた。吉沢亮という役者が持つ卓越したコメディセンスを世に見せつけた瞬間でもあった。