なぜ姫路ではこれほどまでにホルモンと辛口鍋の文化が根付いたのでしょうか。その背景には、播磨臨海工業地帯を中心とする産業構造と、地理的な食肉流通ネットワークが深く関係しています。
戦後、製鉄所や重化学工業の工場群で働く労働者にとって、高タンパクで安価、かつスタミナのつく内臓肉は日々の活力を支える重要なエネルギー源でした。さらに近隣の加古川市には大規模な食肉センターが存在し、屠畜から数時間以内の極めて新鮮な内臓肉が姫路の市場へ直接供給されるインフラが整っていました。この鮮度優位性が、臭みのない上質なホルモン食文化の基盤を築いたのです。
この土壌から派生した「唐々鍋」は、焼肉のタレ文化と韓国伝統のチゲ鍋が融合し、播州人の濃口醤油や甘辛い味付けを好む嗜好に合わせて独自の進化を遂げた産物です。ホルモンから溶け出したコラーゲンと脂の旨味が凝縮されたスープに、豆腐や白菜、太モヤシを煮込む構造は、栄養学的にも無駄のない完成された食の知恵といえます。