リスナーが『情炎』に引き込まれる最大の理由は、徹底して研ぎ澄まされた歌詞とその奥底に潜む歌詞の意味にあります。作詞者としての吉幾三は、理屈では割り切れない男女の業(ごう)を生々しい言葉で描写しています。
歌詞中で繰り返される「燃えて燃えて燃え尽きて」というフレーズは、心理学でいうところの「破滅的愛着(Obsessive Attachment)」の構造を鮮明に映し出しています。愛する対象を失う恐怖と、自分自身を焼き尽くしてでも相手と一体化したいと願う強烈な衝動。社会的な規範や日常の倫理観を超えた地点にある「愛の狂気」を、吉幾三は極めて詩的かつ劇的な言葉遣いで描き出しました。
昭和・平成の歌謡界が育んできた「情念の美学」を究極まで突き詰めた結果、聴き手は自らの胸の奥深くに眠るやり場のない情熱を刺激され、カタルシスを覚えるのです。