全摘出手術後に患者が覚える「後悔」の念は、単なる精神的な動揺ではない。身体構造の劇的な変化に由来する、明確な医学的根拠が存在する。
甲状腺全摘出術を実施すると、体内の代謝を司る甲状腺ホルモンが自力で一切分泌されなくなる。手術に伴う主なリスクとしては、声帯を動かす神経に影響が及ぶ反回神経麻痺(声のかすれや高音障害)、副甲状腺の機能低下による手足の痺れ(低カルシウム血症)、そして不可逆的な甲状腺機能低下状態が挙げられる。術前にこれらの症状に関する具体的なイメージを持てないまま手術を受けると、術後に生じる著しい全身の倦怠感や気分の落ち込みに対して、深い後悔を抱く結果となる。