2020年1月に公開された映画『ラストレター』で、松たか子演じる主人公の長男・岸辺野颯香役を演じた際、本名である「降谷凪」というクレジットは大きな衝撃を与えました。岩井俊二監督が手掛ける繊細な映像美の中で、どこか憂いを帯びた透明感ある佇まいと、瑞々しい感性を披露したことは記憶に新しい事実です。
当時、映画関係者や大手芸能プロの間では「とてつもない大器が現れた」「争奪戦は必至」と囁かれ、引く手あまたのオファーが舞い込みました。ところが、その後の降谷凪の俳優活動は完全にストップします。連続ドラマや映画、CMへの露出は一切見られず、事実上の活動休止状態に入ったため、ネット上では「芸能界を引退したのではないか」という憶測が流れるほどでした。
この空白期間の背景には、母親であるMEGUMIの並々ならぬ覚悟が存在します。当時の特番インタビューや自著・手記で語られた「子供時代にしか培えない感性や友だちとの時間を、大人のビジネスに巻き込みたくない」という生の告白が示す通り、映画出演はあくまで「本人が映画作りの現場に興味を持ったことへの一度きりの挑戦」という位置付けでした。
現在に至るまで、彼が大手芸能事務所に所属した形跡はありません。商業的な芸能活動から意図的に距離を置き、表現者としての基礎体力を養うための「助走期間」を選択したというのが業界内での一致した見立てです。