現場でトラブルの引き金になりやすいのが、寺院側が口にする「お布施はお気持ちで結構です」という言葉だ。遺族側が一般的な感覚で5万円や10万円を包んで持参したところ、住職から「その金額ではこのランクの戒名はお渡しできない」「先代の格を落とすことになる」と難色を示され、関係が険悪化する事例が散見される。
宗教法人法上、お布施はサービスへの対価ではなく「宗教活動に対する自発的な喜捨・寄附」と位置づけられている。そのため、寺院側が明確な価格表を提示することを躊躇する構造が長く続いてきた。しかし、この曖昧さが現代の消費者感覚との間に決定的な溝を生んでいる。
全国の寺院が加盟する全日本仏教会でも、寺院と社会との信頼回復に向け、情報開示やお布施の透明化に関する議論やガイドラインの策定が進められている。それでも、個々の寺院の裁量に委ねられている部分が依然として大きく、現場での摩擦は根深い。