警視庁の本部庁舎において、殺人や強盗といった凶悪犯罪を追う捜査第一課が「動」の象徴であるならば、警視庁刑事部捜査第二課は徹底した「静」のスペシャリスト集団として恐れられている。詐欺、横領、背任、脱税、選挙違反、そして贈収賄。彼らが扱う事案は、一見すると合法的な商取引や行政手続きの仮面を被っている。犯人たちもまた、社会的な地位や名声を持つエリート層であることが大半だ。
「二課の刑事は電卓と法律書で犯人を仕留める」と言われる。現場に残された指紋や防犯カメラの映像を追うのではなく、何万枚もの会計伝票、銀行口座の送金履歴、電子メールの文面を何ヶ月もかけて精査する地道な作業が捜査の基本となる。わずか1円の数字の不一致から巨大企業の不正会計を暴き出し、何気ない会食の領収書から政官癒着の端緒を掴む。派手さとは無縁の緻密なパズル解きこそが、知能犯たちの鉄壁のアリバイを突き崩す唯一の武器となるのだ。